「市場は物理法則で動く」と 物理学的経済理論
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「市場は物理法則で動く」(マーク・ブキャナン)をやっとのことで読み終えました!
やはり小説を読むのとは違い、ページの上をスイスイジャンプしながらあっという間に読み終えることはムリ!
第一、ページ上の文字の分量が違う!
小説なら会話が多く、余白であふれています。
ところが、本書のような経済や物理に関する文章では、論理の筋道を見失わないように小説のように読み飛ばすことはできません。
理解に困難なところを我慢し活字だけを目で追っていることも多々ありました。
そういう時は、いつのまにか目がトロトロ、頭ボンヤリ、手の力ダラリ・・・
バタっと本が手から落ちた音で驚いて目が醒めた!
それでも、我慢して読んだ甲斐がありました。
積年のウサが晴れたのでした!
何に対して?
新古典派を中心とする主流派経済学に対して!
わたしたち団塊の世代シニアが昔々、およそ半世紀ほど前、大学で習う経済学と言えばほとんど「マル経(マルクス経済学)」でした。
当時盛んだった学生運動には興味なかったものの、「マル経」自体はとても刺激的でした。
資本主義社会に溢れる「商品」に内在する二つの性質とそれらの矛盾から説明が始まり、その矛盾を拡張するものとして「貨幣」「資本」「生産過程」「流通過程」「信用制度」へと進み、資本主義社会の(裏の)仕組みを描いていました。
一方、近経(近代経済学、これも今では死語なのか?)の方は、需要と供給の「見えざる手」に任せっきりで、その内奥にまで踏み込むことはなく、どこか消化不良に感じていました。
また、近経では、微分積分を多用した数式が現れることがあり、そのたびに消化不良どころか理解不能のストレスが溜まりに溜まっていったのでした・・・
その積年のストレスを粉々に打ちこわし風穴を開けてくれたのが本書「市場は物理法則で動く」でした!
元物理学者の著者は、外から経済学の世界に風穴を開けたのでした。
美しい数式で固めた主流派経済学の「均衡理論」は、理論のための理論でしかなく、「ブラックマンデー」や「リーマンショック」のような現実の金融危機を予測したり、対処法を提示したりすることはできない、と喝破したのでした!
最近の経済学は、コンピューター上でビッグデータを駆使し、様々な経済問題に的確に対処している、という印象を持っていたのが、実はそうではなかったと著者は述べています。
コンピューターで膨大な気象データを活用し、台風や豪雨を正確に予測をする最近の気象学とはケタ違いなのだそうです!
そして、著者がある箇所で述べていることに驚きました!
人間一人一人はそれぞれ自由意志を持っていて、その行動を予想できないにもかかわらず、市場動向などの集団的な全体の動きでは物理法則に合致する動きを呈するようになるのだとか!
これを読んだ時、はるか昔「マル経」の解説本で読んだ一節を思い出しました。
「疎外論」から生じる経済法則についての例え話でした。
人間はすべて自由意志を持っているのでどの方向にでも進むことができるが、繁華街の大通りを歩いている時のように人の波に押されると自分の意思とは無関係に集団の動きに従わざるを得ないことになる・・・
半世紀を経て出会った哲学的経済理論と物理学的経済理論!!