定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「ノルウェイの森」と 1969年


スポンサーリンク

ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)

真紅と深緑色に上下巻の表紙を彩られた「ノルウェイの森」(村上春樹)を読み終えました。
美しくももの悲しい音楽を聴いたあとのように余韻に浸っていると、物語の断片が次々と浮かんでは消えていきます・・・

 

この物語も7、8年前に読もうとして手に取ったことがありました。
村上春樹氏のベストセラー小説で映画化もされ話題になっていたので、一度目を通しておこうと思ったのでした。

 

ところが、「1Q84」の時と同じく、平易な文章をたどって数ページ読み進んだところであえなくストップ!
それまで読み慣れていた通好みの「ひねりの利いた」文章と異なり、あまりに平明すぎて「のっぺらぼう」の文章に手こずり、何の感慨も湧くに至らずお手上げとなったのでした!
なんだ、これは?
真っ昼間、わけの分からないまま「のっぺらぼう」のお化けに遭遇したかのようでした!

 

そして、今回!
最近たて続けに村上春樹氏の4作品(フィクション)を読んだ後にこのノルウェイの森に再挑戦したわけですが、まったく何の違和感も感じず物語の流れに乗ることができ、そのまま面白く読み終えました!
それどころか、読みながら絶えず文章の奥でチェロのもの悲しい重低音の音色が鳴り響いているのが聴こえるようでした・・・

 

37歳の主人公の僕は、ドイツの空港に着陸した時、1969年大学に通っていた二十歳の頃のできごとを思い出すシーンから物語は始まります。
それはちょうどこの物語を書いている作者の年齢と作者の学生時代の年齢にピッタリ当てはまります。
これはフィクションなので、そのまま作者の実生活を写しているわけではないのは当然ですが、ある程度は作者の学生時代の生活を垣間見ることができるのではと思い興味深く読みました。

 

同時に、作者とほぼ同じ団塊世代後期の自分の眼で物語の背景にチラチラ現れる時代の動きを眺めると、なつかしいような哀しいような思いが込み上げてきました!
●大学のバリケード封鎖や紋切り型のアジ演説!
●当時流行ったポップス、ロック、フォークソング、ジャズなどの久しく耳にしていない曲のタイトル!
・・・・・

 

物語の舞台となった、今からほぼ半世紀前の1969年とはどんな時代?
全共闘による東大安田講堂占拠
●アポロ11号月面着陸
●映画「男はつらいよ」公開
●テレビ番組「8時だヨ!全員集合」「サザエさん」放送開始
●「夜明けのスキャット」(由紀さおり
●「ブルー・ライト・ヨコハマ」(いしだあゆみ
●「雲にのりたい」(黛ジュン
●「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫
・・・・・

 

「ガールフレンドに恵まれた大都会での主人公の詩的な学生生活」と「彼女のいないさびれた地方での自分のショボい学生生活」という違い(大きい!)はあるものの、この「ノルウェイの森」を読みながら、主人公、あるいは作者の生き方を追いながら、同時に当時の自分のしょぼくれた姿を暖かい眼で見つめ直すことができました・・・

 

1969年、今となってはミステリー・ワールド!!