「幕末史」と「だれもいなくなった」
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「幕末史」(半藤一利)を読みました。
この本は、幕末の日本を震撼させたペリー来航からはじまり、急激な時代の地殻変動を経て、その15年後に明治維新を迎えることになり、さらに、新時代の骨組みがおおよそ出来上がる明治10年頃で終わっています。
幕末の歴史ものは、司馬遼太郎のいくつかの作品や幕末から明治初期にかけての歴史解説書を読んでいました。
この本は、今まで頭の中にバラバラに入っていた歴史的諸事件を時系列に沿って整理し直すのに役立ちました。
なかでも特に印象に残ったのは、薩摩藩・長州藩を中心とする倒幕軍と会津藩・桑名藩を中心とする幕府軍が戦い、その後の両軍の運命を決定づけた一連の「戊辰戦争」でした。
作者は、この戦争を、徳川時代を切り開いた「関ヶ原の戦い」になぞらえ、また、戦後の時代へと続く「太平洋戦争」との類似性にも言及しています。
倒幕派が勝利を収め、戦争責任の裁定を行う時、勝海舟を中心とする幕府派は、あくまでも15代将軍徳川慶喜の命を守ることに奔走しました。
太平洋戦争終結の際にも、昭和天皇を救うことが第一義とされたことが注目されます。
明治維新についての大方の見方は、土台の腐った封建制度を打ち砕き、天皇中心の新時代を築いたという肯定的なものが多いなか、作者は異なった視点を持っています。
作者の父方の実家は新潟県長岡市にあり、子供の頃は、毎年夏休みに実家で過ごしていたこともあり、地元の人々の思いに触れる機会もありました。
新潟県長岡市は、幕末当時、越後長岡藩でした。
長岡藩は、戊辰戦争では官軍に抵抗したあげく敗北し、領地を大半奪われてしまいました。
長岡の人々の思いは、明治維新とは、単なる薩長(薩摩藩・長州藩)による暴力革命以外のなにものでもない、というのでした。
黒船来航から明治維新、そして明治10年頃までの25年間に、多くの歴史に名を連ねる人物が輩出されました。
その中で、病死・暗殺・処刑などで天珠を全うできなかった人が実にたくさんいます。
吉田松陰、高杉晋作、井伊直弼、島津斉彬、徳川家茂、孝明天皇、坂本龍馬、江藤新平、大村益次郎、木戸孝允、西郷隆盛、大久保利通・・・
歴史の波におどり出た人たち、
そして、だれもいなくなった・・・