定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「オホーツク諜報船」と「霧の向こう側」


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オホーツク諜報船 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)

先月ブログで取り上げた「知の教室」(佐藤優の中に、作者佐藤氏と作家西木正明氏との対談が収録されていて、そこで「オホーツク諜報船」(西木正明)を知りました。
「オホーツク諜報船」は、今から37年前、ソ連が崩壊する10年ほど前に書かれたノンフィクションノベルで、興味をそそられ読み始めました。

 

「知の教室」の対談のテーマがインテリジェンスだったこともあり、「オホーツク諜報船」を読む前から、崩壊前のソ連北方領土などの暗いイメージを頭に描いていました。
そして、実際に読み始めると、予想通り寒風吹きすさぶ北海道北部の半島や流氷漂うオホーツクの海を舞台に重厚なストーリーが展開されます。
    

読み進むにつれ、崩壊前のソ連北方領土の島の様子、密漁船など、今まで知らなかった「霧の向こう側」の世界が次々と現われ、未知の世界へとぐいぐい引き込まれいきました。
警察や公安の目をくぐって、ソ連の諜報活動の一端を担うことを余儀なくされ、ついには運命を狂わせてしまう北の漁師たち・・・

 

作者は、大学中退後、出版社に勤務し、40歳の頃、意を決して作家の道に飛び込みました。
行く末を思い悩みながらも、自らの信念を貫き通し、丹念に北海道で取材を重ね、みごとこの第一作目で日本ノンフィクション賞新人賞を受賞しました。

 

この本を読んでますます思いを強くしたのが、かつてのソ連や今のロシアは、「冷たい霧のカーテンに閉ざされた謎の世界のようだ」ということでした。
スラブ様式の宮殿に魅せられていったん「霧の向こう側」へ踏み入ると、二度と出てこられないかもしれない、という漠然とした恐怖心!

 

それは、かつてのソ連に限ったことではありません。
プーチンに代表される今のロシアは、経済面では大国ではありませんが、その政治面では、世界に絶大な影響力を及ぼす超大国と言えます。
ウクライナやシリアへの軍事介入、米国やEUの選挙への影響、ロシア亡命者の謎の死、etc.!
「オホーツク諜報船」は、ソ連崩壊前を描いたものですが、底流となっているものは、今のロシアでも変わっていないのでは・・・

 

「霧の向こう側」が覗ける「オホーツク諜報船」!!