「サモトラケのニケ」と Chromebook
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古いものが詰まっている戸棚を整理していると古いVHSビデオデッキが見つかりました。
久しぶりに見るデッキを電源やテレビに接続し、あるVHSテープを挿入しました。
テープはデッキに吸い込まれるとテレビの黒い画面が白く反転し、粗い画質でなつかしい画面が現れました。
20数年前、会社の研修ツアーでヨーロッパへ行った時に8ミリビデオで撮影したものを編集し、VHSテープにダビングしたものでした。
ツアーバスの中では、録画モードでテープをずっと回し続け、バスの動きとともに移り変わる窓外の風景と案内ガイドさんの説明が録画・録音されるようにし、さながらヨーロッパ紀行番組のまねごとのように仕上げたものでした。
VHSテープで映しだされる画面を見ていると、当時のツアーの記憶がよみがえってきました。
このツアーは、「観光」ではなく「研修」なので、観光名所はあまり見ることができず、せっかくのヨーロッパツアーを物足りなく感じていました。
そこで、研修ツアーの最終日、フランスのパリを昼過ぎに出発して帰国の途に着くという午前中のわずかな自由時間を利用し、同僚数名とメトロ(地下鉄)に乗ってはじめてルーブル美術館を訪れることにしました。
途中、迷いながらもどうにか目指す美術館に到着できました。
ルーブル美術館はひと通り見て回るのに1週間はかかると言われています。
それをわずか帰国の飛行機が出る前の、正味1時間足らずで見て回ると言うのですから、どだい無理な話しなのです!
そこで、みんなで相談した結果、鑑賞するターゲットを絞りました。
「モナリザ」と「ミロのヴィーナス」の2点です!
まるで迷路のようなルーブル美術館内の探索がはじまりました。
美術館の地図も見ず、メクラめっぽうターゲットを求めて歩き回り、走り回りましたが、なかなか見つけられず、出発時間は迫る一方、追い立てられる気分で、古代エジプトの棺(ひつぎ)が並ぶ部屋を全速力で走り抜けました。
やっと「モナリザ」のある部屋まで来ましたが、思ったより小さい有名な絵画の前には大勢のひとが群がり、見物人の頭の隙間からやっと垣間見るといった具合でした。
また、「ミロのヴィーナス」も期待が大きすぎたせいか、それほどの感動には至りませんでした。
ヴィーナスを見た後、らせん階段を降りて行くと、人気のない踊り場に彫像がぽつねんと展示されているのが眼に入りオヤッと思いました。
彫像は、薄衣(うすぎぬ)をまとい、胸を反らせ、風に向かって大きな翼を広げています。
首から上と両腕のない女神像、「サモトラケのニケ」です!!
渦巻状に階上に連なるらせん階段、はるか高い窓からふりそそぐ朝の光のすじ、それを浴びる高い台の上の翼を広げ、顔と腕のない白い女神像・・・
自分でもなぜだか分からないながら、何かに惹きつけられ、この像の周りをぐるぐる回りました。
「なんなんだ? なぜなんだ?」と心のなかでつぶやきながら、像の周りの空間を離れられず、出発時間が迫るのも忘れ、ただ呆然と立ち尽くしていました・・・
あれから20数年経った今でも、あれは何だったのだろうと、不思議に思うばかりです・・・
Chromebook 画面から大空へ翔び立とうとする「サモトラケのニケ」!!