定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「羊をめぐる冒険」と「虚・実ミックスワールド」

羊をめぐる冒険

「1Q84」を読んだ後、こんどは村上春樹氏の初期の作品「羊をめぐる冒険」を面白く読みました!
これまで氏の小説を読んだのは数えるほどですが、それでも他の作品との関連性が推しはかれました。

 

この物語の特に最初の方では、デビュー作風の歌を聴けと同じ名前の人物が登場し、さながら続編の様相を呈しています。
物語の進展につれて、「1Q84」の登場人物と似たタフガイも現れ、しだいに読者を運ぶ乗り物のレールは、現実世界を逸脱し不思議の世界へとのびていきます・・・

 

氏の作品を読み始めて最初にとまどうのは、登場人物のユニークなネーミング!
他の作品もそうですが、この物語でもいわゆる普通の名前の登場人物は出て来ません!

 

また、ストーリーの展開も、他の多くの小説を見渡しても見つからないくらいぶっちぎりのユニークさ!
そもそも、物語のタイトルからしてオリジナリティー満載!
これらのものすべて受け入れるか、それとも拒否反応を示すかで氏の評価は二分されるのでしょう。

 

一見、現実離れしたネーミングやストーリー展開に目を奪われがちですが、そのなかにも現実世界のリアルで詳細な描写を通じて、確かな存在感を感じさせる文章はさすが!
登場人物(特に女性)の服装や料理の品目なんかの詳しさは恐れ入るばかり、それに風景の描写なんかも目の前にその姿が見え、空気が感じられる気がします・・・

 

氏の比較的新しい作品「1Q84」を読んだすぐ後で、デビューから間もない頃のこの作品羊をめぐる冒険を読むと、さすがに出来栄えの違いが感じられますが、それでも、30歳代初期に著したことを考えるとよくできた作品と言えると思います。

 

また、この物語を読みながら、本筋から外れた楽しさも味わうことができました。
たとえば、電話をかけるシーンで、当時スマホやケータイがなかったので、外では硬貨を入れて通話する公衆電話、家の中ではダイヤルやプッシュボタンのコード付き電話が登場し、これもまたなつかしい「ジュークボックス」も出てきました!
ストーリーのなかで今はもう見られないモノを追いかけながら、同時に当時の自分を追いかけていました・・・

 

あと、主人公の「僕」がギターを弾くシーンで、こういう描写が出てきました。
「・・・メロディーをひととおり弾き、あとワン・コーラス、アドリブのようなものをやりかけてから小節の数がわからなくなってやめた。」
この箇所を読んだとき、ヘタなりにピアノでジャズのアドリブに挑戦し、途中でどこを演奏しているか分からくなった自分を思い出し、思わずニヤリとしました!
こういうところは、村上春樹氏はジャズに詳しく、若い頃ジャズ喫茶を開くほどジャズに傾倒したことを彷彿とさせました・・・

 

村上流「虚・実ミックスワールド」はいかが?!

 

 

 

「1Q84」と フィクションの魅力(その3)

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「1Q84」の物語を読んでいくと、物語の中の現実世界のほかに別世界が現れ、登場人物たちがとまどう様子が描かれています。
そこでは、夜空の月が重要な意味を持ちます。
フィクション世界のなかのフィクション世界!
ああ、ややこしや〜!


でも、一歩、いや二歩下がって冷静に物事を眺めてみると、真理を追求するには、ファクト(事実)のみ追いかけるよりフィクションを混じえた方がより効果的なのでは、という気がします。
・・・・・

 

この世の中で、余分な虚飾を排し、誘惑に負けず、媚びへつらいや忖度(そんたく)もせず、脅しにも動ぜず、ただひたすら真面目に論理の正当性のみを追求するモノとは?

 

それは、「数学」!
高校を卒業してから還暦に達するまで、まったくと言っていいほど縁がなかった「数学」!
そもそもそれまで相性が良かった「数学」とたもとを分かつキッカケとなったのは、高校2年に出会った虚数」!

 

虚数 i 」は2乗すると、なんと「−1」になる!

 ありえへ〜ん!

「プラスもマイナスも2乗すると必ずプラス」とずっと頭に刻み込んでいた大事な法則が一瞬にして無に帰しました!
そもそも「虚数」を表わす記号「 i 」は " imaginary number "(想像上の数)の頭文字で、現実にない架空のものにすぎないわけなのです!

 

これを境に数学に対する不信感(?)が増し、成績は下落の一途をとげました。(単純に勉強しなかっただけ!)
そして、還暦を迎えるにあたり、やっと積年の恨み(?)を果たすときが来たッ、と「虚数」に関する本を数冊買い込み、進み始めた老眼を酷使して高校のときのカタキを討とうと意気込んで読みました。

 

そこで分かったのは、「虚数」とは、身近に感じる「自然数」や「整数」などを合わせた「実数」とは別世界の「架空の数」でありながら、実は、わたしたちの生活に大きく影響する電気や電子関係の計算には欠かせない重要な存在である、ということでした!
さらには、理論物理学量子力学で「量子」の運動を記述するのに「虚数」が欠かせません。
わたしたちを取り巻くモノすべて、いや、それどころかわたしたち自身さえ、「虚数」で表される「量子」からできているのです!

 

こうして、世界を記述するには「実数」だけでなく「虚数」が不可欠だという数学上・物理学上の真実に気付かされたのでした!
論理の整合性を純粋に追求する「数学」でその存在の重要性を認められた「虚数」(想像上の数)こそ、物語の「フィクション」(想像上の事実)と相通じるのではないでしょうか!

 

ひと目で異常さが分かる「虚数」でなくとも、生まれてから何十年と見慣れて当たり前のように思っている物事にも、あらためて深く考えてみるとその不思議さに驚くことがあります。
夜空を明るく照らす月もその例外ではありません。
超高速で回転しながら、その引力で絶えず地球上に影響を及ぼし続けている不可思議な球体!

久しぶりに夜空に浮かぶ月を眺めてみると、
おやっ、どうしたんだろう?
いつもと違う!
目の錯覚かな?
・・・・・

 

さあ「1Q84」の世界のはじまり、はじまり〜!!