ひと月ほど前、「ひまわり」の絵画で有名なゴッホについての本を読み、ブログ「ゴッホの耳 と ゴッホの思い出」をアップしました。
その関連で、文芸評論家小林秀雄が半世紀余り前に著した「ゴッホの手紙」を読みました。
ゴッホは、生涯を通じて、全幅の信頼を寄せていた弟のテオに膨大な数の手紙を書き送っています。
この本は、ゴッホの手紙全集を読み感銘を受けた小林秀雄が、ゴッホの手紙を翻訳し、手紙文に評論文を付けたものです。
ゴッホの手紙は、彼がオランダで絵を描き始めた頃から始まり、パリに出て印象派と出会った頃、次いで、彼の才能が一挙に開花する南仏アルル時代を経て、衝撃的な耳事件の後移り住んだオーヴェルで幕を閉じます。
一般的なゴッホのイメージは、優れた絵の才能を持ちながら、精神に異常をきたし自ら命を絶った天才画家というものです。
よく知られている絵画「ひまわり」や「糸杉」は、鮮やかな色彩と大胆な絵筆さばきで観るものを圧倒せずにはおきません。
彼の手紙を読むことによって、それらの絵画の裏にひそむ彼の情熱や苦悩を知ることができます!
ゴッホの手紙は、膨大な数だけでなく、その内容も嵐のように凄まじいものです!
まるで、絵の具がいたるところに飛び散り垂れ流れキャンバスを埋め尽くすように、次から次へと湧き出る言葉がレターペーパーを覆い尽くします!
ほとんどの彼の出した手紙は、弟のテオ宛のもので、日々の身の回りのことや出会った人の印象から、色彩やデッサンなどの描画方法、また、自らの病への恐れや苦悩、さらには自然や人間性への飽くなき追求へと言葉がほとばしり出ます!
しかも、驚くべきことに、それらの言葉がゴッホにとっての外国語(フランス語)で書かれていることです!
ゴッホの母語はオランダ語で、両親への手紙はオランダ語で出していますが、弟などへの手紙はすべてフランス語で書かれています!
グツグツと煮えたぎり噴き上げるマグマのように、熱い想いをフランスの言葉に乗せ、昼間もうれつな早さでキャンバスに絵の具を塗りつけるように、夜もうれつな早さで紙に文字を書きつけます。
語学の天才!
ゴッホの魂の熱い叫びに、小林秀雄の個性豊かな独特の調べが絡み、あらためてゴッホの数々の名作を深く味わわせてくれます・・・
「ひまわり」の油絵の具にゴッホの情熱・苦悩を見よ!!