定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「ゴッホの耳」と ゴッホの思い出


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ゴッホの耳 ‐ 天才画家 最大の謎 ‐

新聞の書評で知り面白そうだと思い、ゴッホの耳」(バーナデット・マーフィー)を読みました。
読み終えてあらためて、衝撃的な結末を迎えたゴッホの37年の生涯、さらには、130年近く前の南仏アルルの町の様子やゴッホを取り巻くアルルの人たちの生活に尽きぬ興味を覚えました!

 

著者は、ゴッホの専門家ではなく、単に美術史の教師の経験があるだけの素人でした。
あるとき、有名なゴッホの耳の事件に興味を持ち、そこから、ゴッホについて定まっていない説がいくつかあるのを知り、独自にゴッホの調査を始めるに至りました。

 

しばらく調査を進めていくうちに壁にぶち当たり、それ以上の進展は望めないように思えました。
ところが、ここで著者は、思いもよらない独自の方法で壁を打ち破っていきました!
著者は、今から130年近く前、ゴッホが優れた絵を多作した南仏アルルの町の1万5千人以上の住民のデータベースを作成し、その情報を駆使してゴッホと住民の行動の実態を把握しようとしたのでした!

 

それから7年かけて、著者は、当時の国勢調査記録・法律文書・病院の入院記録などの公文書、美術館などの資料、新聞記事などを調べ尽くしました。
当時アルルに住んでいたカフェのオーナーや肉屋、郵便配達員、医師など、一人ひとりのデータを地道に集めていくと、それまで単なるデータだった人たちが、まるで長編小説の登場人物のように豊かな人間味を備えた血の通った人間に見えてきたのでした!
著者は、この独自に作成したデータベースを駆使して、それまでのゴッホにまつわる定説をくつがえしたり、新たな画期的な発見を得るに至りました・・・

 

わたしが、ゴッホを最初に知ったのは小学校か中学校の授業でだったと思いますが、自分で画集を買ったのは高校生のときでした。
特に好きだったということもなく有名だったのでどんな絵か見てみよう、くらいの気持ちからでした。
画集のページをくっていくと、最初の頃は暗い色調だったのが、次第に明るくなり、さらに、アルル時代以降は原色も使われ、目くるめくような大胆な筆使いに驚いたのを覚えています。

 

その後、再びゴッホと出会ったのは四十数年後、定年後の生活を送るようになり、兵庫県立美術館を訪れたときでした。
印象派の絵画の展覧会が催されていて、ルノワールドガセザンヌなどの有名な絵画が展示されていました。
その中に、「アルルのゴッホの寝室」がありました!

「アルルのゴッホの寝室」は、ゴッホの絵の中でもわたしの「お気に入り」の一つで、この展覧会を訪れた目的の一つでもありました。
以前見たことのある画集の絵は、もちろん二次元のペラペラでしたが、フランスのオルセー美術館からはるばるやってきた「ホンモノ」は、おそるおそる絵に近づきすぐそばで見てみると、ベッドや床板などを描いている油絵の具がたった今塗ったばかりのように盛り上がり輝いているのに圧倒されました・・・

 

それから数年経ったある土曜日の朝。
新聞をパラパラめくっていると、書評欄の本のタイトルが目に入りました・・・
ゴッホの耳」!!