「村上朝日堂の逆襲」(村上春樹・安西水丸)を読みました。
この本は、30年余り前「週刊朝日」に1年間連載された村上氏のエッセイと安西氏のイラストをまとめたものです。
村上氏が「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」それに「羊をめぐる冒険」を発表し、これから大作を次々と書き紡いでいこうという、意気揚々とした36歳頃のものです。
まず、「村上朝日堂の逆襲」というタイトルのキバツなこと!
「逆襲」とは、はじめに、襲撃され、蹴散らされ、傷つけられ、貶められた後、満を持して傷を癒やし、力を蓄え、武器を磨き、時機を謀り、一挙に攻め込んで敵の大将の首を取り、積年の恨みをはらすこと!
村上氏の逆襲する相手とは?
エッセイを読んでいくと、その答えがところどころにチラチラ見え隠れしています。
村上氏は、自身が過ごした高校生活や大学生活(早稲田)をあまり良くは思っていないようです。
恨みつらみさえ聞こえてきます。
何より文章で、大学で学んだことは何もない、とハッキリ言っています。
また、学生のときから専業小説家になるまで、ジャズ喫茶の経営で朝から深夜までクタクタになるまで働き詰めで決して裕福ではなかった7年間!
作家デビューしてからも文壇と距離を置き、批判を浴びながらもようやく小説家として独り立ちできてきた36歳の村上春樹氏!
ようやく下積み時代を脱して、世間や文壇やらに物申したいことがあったのでしょう・・・
安西氏のイラストがイケてる〜!
表紙のイラストなんかはバツグン!
真っ赤な朝日を背に、坊っちゃん顔(!)の村上氏がムチを振り回して逆襲に興じています!
その後ろで、猫(犬?)が薄笑いを浮かべて眺めています・・・(猫は安西氏?)
わたしは読みながら、ほかの人だったらサラッと読み過ごすような些細なところに注目してしまいます。
たとえば、こういうところ。
「十代の頃に『カラマーゾフの兄弟』と『ジャン・クリストフ』と『戦争と平和』と『静かなるドン』を三回ずつ読んだ・・・」
「・・・、『細雪』なんて三回も読んだ。」
若い頃からほんとうにすごい読書量!感嘆するばかり・・・
ユーモアたっぷりのエッセイ・イラストはいかが?!