定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「半島を出よ」と 福岡地図上の毒カエル


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半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)

「半島を出よ」(村上龍)を読み終えたところです。
上下巻900ページの長編にもかかわらずグイグイ惹きつけられ、特に下巻に入るとこの先どうなる、どうなる?と気にかかりどんどん読み進めることになりました・・・

 

今年の初め頃から村上春樹の作品を集中的に読み始めほとんど読んでしまった後、こんどは同年代の村上龍の作品を読み始めました。
初期の小説を読んだ後、前から気になっていた「半島を出よ」を読んでみようと思いました。

十数年前に発表された作品で、北朝鮮が九州福岡を侵略する物語ということくらいは知っていました。

 

十数年経った今もなお、いや前よりもいっそう核開発を進め日本のみならず世界の脅威となっている北朝鮮
いったん読んでみようと思うといろんな興味が一挙に湧いてきました。


●その現実に存在する脅威の国、北朝鮮の日本(福岡)への侵攻を小説としてどのように描いているのか?
●その侵攻に対し、日本や福岡はどのように対処したのか?
●小説ではどのような決着をつけているのか?

 

読み始めると、まず、そのスケールの壮大さに驚きました!
いろんなことが国をまたいで実に詳しく書かれていました。


北朝鮮の政治組織や民衆の暮らしの実情。
●日本の政府官邸や地方(福岡)組織の実態。
●物語の中で効果的に使われる建築・生物・武器弾薬のマニアックな詳細。
・・・・・

 

いったいどれだけのスタッフで、どれだけの資料を集め、どれだけのアドバイザーの説明を聞き、どれだけの時間をかけたのか?

 

上巻は、主に仮想事件とそれに対する日本政府の反応・対処などが詳細に渡って描かれています。
危機に対し優柔不断で曖昧な議論に終始し確固とした決断を行いえない政府の対応は、この小説が発表された6年後の東日本大震災原発事故で苦悶する官邸の姿を先取りしているように見えます。

 

下巻は一転して、決断できず危機の進展を見守るだけの不甲斐ない中央・地方組織に代わり、普段は社会の片隅に押しやられているマイノリティーが集結し、思いも及ばない行動で事件の解決を迎える、という胸のすくようなエンタメ的な内容となっています。

 

脅威と脆弱性の象徴(表紙デザイン)
福岡地図上を這う毒カエル!!