定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「村上春樹 雑文集」と「耳掃除の心地好さ」


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村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

思えばふとしたきっかけから勢いで、ヒョイッと「ムラカミ丸」に跳び乗って海原へ出たわけでしたが、早3ヶ月余りずいぶん遠くまで来たものです!
初めは、ちょっと潮の香りをかいですぐに引っ返すつもりだったのが、ドップリハマってしまうことになるとは・・・

 

この3ヶ月余りの間に気がつけば村上春樹氏の長編小説、中編小説、エッセイ、翻訳、対談など14作品を読み終えていました!
つい4ヶ月前までは、よもや小説(フィクション)なんかを読むことになるとは思いもつきませんでした!

 

ましてや、まして!
今ハマっている小説と言えば、今まで何度も読みかけてはその都度途中で放り出していた「ハルキ作品」なんですから!?
ちょうど、ついこの間までマスコミで絶対あり得ないと識者が声高に主張していたのが、ここに来て急に現実味を帯びてきた「米朝会談」のようなもの!

 

さて、そういうぐあいで今回は「村上春樹 雑文集」(村上春樹)を読みました。
この作品は、氏が今まで長年に渡って作ってきた様々な文章を集めたものでした。
あいさつ、音楽について、翻訳について、序文・解説など多岐にわたっています。

 

これはもちろんフィクションではないので、読んでいる途中ごくまれに作者の普段の生活がチラッと垣間見える瞬間があって、なぜか得をしたようなポカポカした気分になることがありました。
ちょうど、散歩の途中ごくまれに道端の小石の下に百円硬貨が光っているのを見つけたときのよう!(作者に失礼だぞッ!)(失礼!百円硬貨でなく貴金属!)

 

たとえば、1995年7月、村上氏はアメリカ横断旅行中、あるホリディ・イン・モーテルの一室でノートパソコンのキーを打っていました。
そのノートパソコンとは、アップルのマッキントッシュ・パワーブック520!(そうなんだ!氏は当時マックのパワーブックを使っていたのか!)

 

また、氏は小さい頃ピアノを習った経験があり、高校の頃、気に入ったジャズの楽譜とLPレコードを参考に熱心にジャズピアノの練習をしました。
そして、それまで見たこともないような不思議なコードをたどたどしく鍵盤上でたどっているうちに、ジャズというのはこういう風に音を組み立てて響かせるんだ、と納得したそうでした。(氏は小さい頃ピアノを習い、その後もときどきはピアノの前に座ることがあるんだ!)

 

この「雑文集」には、あいさつの一つとして「エルサレム賞受賞のあいさつ」が含まれています。
9年前、新聞の記事で氏が受賞のあいさつで「壁と卵」の話しをした、というのを読んだのを覚えています。
そのときは今ひとつハッキリ分からなかったのが、あいさつ全文を読むと理解することができました。
「壁と卵」の話しは、イスラエルの受賞会場で、イスラエルの政策批判をギリギリの範囲で行うためだったのでした!

 

なにより面白かったのは、当時を振り返った短い添え書きで、氏は受賞のためにイスラエルへ向かう前、ビデオで映画「真昼の決闘」を繰り返し見て、それから意を決して空港に向かったのだそうでした!
決闘場に向かうカウボーイのように・・・

 

これだッ!と思ったのは、
氏が米国作家ポール・オースターの作品を読んでいるときの「心地好さ」を語った一節でした。
「・・まるで春の昼下がりの縁側で耳掃除の名人に耳を掃除してもらうような心地好さ・・」

 

これこそ村上作品を読むときの「心地好さ」!!

  

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)