「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(村上春樹)を読みました。
著者初期の三部作「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」を読み終え、それに続く長編小説なのと変わったタイトルに惹かれこの本を手に取りました。
上下文庫本二冊の長編小説を、この次どうなるのかどうなるのかとハラハラドキドキしながら面白く読みました。
読み始めは、これまで読んだ著者の他の作品とかなり勝手が違っていたので少しとまどいましたが、しばらく読み進み、この壮大で奇抜な物語のレールに車輪がガチッとハマるとあとは最終章まで一直線でした!
読んでいる途中も読み終えた今も、こんなスケールの大きい不思議なメルヘンチックでもありしかも示唆に富んだ物語をよく考え出したものだ、と感心するばかりでした!
著者デビューから6年後36歳のときの作品で、その驚嘆すべき想像力には脱帽!
細部もしっかり書き込まれていて、著者特有のユニークな比喩がスパイスのようにキリッと料理の味を引き締めています。
たとえば、こういう思いもよらない表現にはついニヤリとしてしまいます。
「・・・ウェイターがやってきて宮廷の専属接骨医が皇太子の脱臼(だっきゅう)をなおすときのような格好でうやうやしくワインの栓を抜き、グラスにそそいでくれた。」
他の作品にも共通しますが、文章を読んでいると絶えずさわやかな涼風に吹かれているような心地良さを感じます。
また、品の良いユーモアも感じられます。
主人公は、絶体絶命の場面でもパニックに陥ることはなく、全然関係ない考えにハマったりします。
泣くときも笑うときも静か、決して大声で泣いたりわめいたり怒鳴ったり切れたりすることはありません。
すばらしく印象的なのは、主人公と女性たちとの会話!
会話の途中、それまでの話しの内容とまったくつながりのない言葉が突然主人公の口から飛び出します。
相手の女性と読者は、一瞬とまどい、続いてその面白さにニヤリとしてしまいます。
女性は微笑みながらこう返します。
「そういうの好き」
果てしない村上ワールドの旅!!
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 全2巻 完結セット (新潮文庫)
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/11/05
- メディア: 文庫
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