定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「騎士団長殺し」と 微分方程式


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騎士団長殺し 単行本 第1部2部セット

騎士団長殺し」(村上春樹)第1部・第2部を読み終えました。
まず、全編を通じて平明で読みやすい文章に感心しました。
ボールの縫い目に指先を引っ掛け、ボールの軌道を微妙に変化させ打者の目をくらませて得意がるようなことはしません。
いつも真っ直ぐ、しかも柔らかいボールが投げ込まれます。
静かに文章を目で追っていくだけでドーパミンが発散されるような心地よい快感を感じることができます!

 

また、頻繁に出てくる比喩的表現が面白い!
一つとして同じものはなく、すべてその場だけのオリジナル!
まったく思いもよらないところから比喩は始まり、なんだろう?と眺めているあいだに照準が定められ見事にターゲットが撃ち抜かれ、なるほど!といつも納得してしまいます。

 

読みながら、次はどうなるのだろう?と絶えずワクワクドキドキし、階下(した)にいる孫から「ジイチャン、ゴハン早く食べなさいって〜!」と大声で呼ばれてもなかなか本から離れることができません!
これだけのストーリーを想像力で創り出すことができるなんて、ほんとうに驚かざるを得ません!

 

以前のブログでも書きましたが、村上作品は、古典的なリアリズム・アートとして見るのではなく、シンプルな線や色で表現されるモダン・アートのようなものとして捕らえるべきだと思います。
また、別の特異な切り口で見ますと、現実世界や内面世界の奥深くへ降りていき不思議な世界を垣間見させる村上スタイルは、あくまでもわたしの個人的な感想ですが、数学の「微分方程式」を連想させます!

 

微分方程式とは、ある曲線のある箇所を限りなくゼロに近い極限まで絞って、その極微の動き(傾き)を式として表したものです。
たとえば、時間をX軸、距離をY軸とすると、そこに描かれるグラフには、ある時点における通過した距離「速度」が表わされます。
そして、そのグラフの式を微分すると、こんどはある時点の「速度」ではなくて、それとは次元が異なる「瞬間の動き」、すなわち「加速度」を表わす式が出現します!

 

村上作品は、こってりと厚く塗り固められた写実絵画ではなく、シンプルな線と色で描かれた抽象絵画のようなもの、さらには、現実や内面の狭間(はざま)の奥深くにひそむ異界をシンプルで無機的な数式で捕らえた微分方程式のようなものではないでしょうか?(あくまでも個人的な感想)

 

そして、村上作品にはよく音楽が登場します。
この作品ではほとんどがクラシックですが、7年間もジャズ喫茶で過ごし頭のなかで絶えずハイハットがリズムを刻むほどジャズが身体に染み付いている作者は、作品の進展においてもジャズのアドリブ演奏のように心地よくスウィングし、ここぞというところでブルーノートをきかせたフレーズを奏で、聴く(読む)ものをうならせます・・・

 

モダン・アート+微分方程式+ジャズ=村上ワールド!!