定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

「小さいおうち」と「昭和十年代」


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小さいおうち (文春文庫)

2018年の1冊目の本として「小さいおうち」(中島京子を読みました。
この作品は、2010年に直木賞を受賞し、2014年に映画化されましたが、今までスルーしていました。

 

学生時代はフィクションばかり読んでいましたが、就職後は本から遠ざかり、定年後になって再開した読書はノンフィクション中心だったからでした。
若い頃は、経験が少なくまだまだ認識の浅い現実自体に興味を持つよりも、フィクションにまだ見ぬ未来を重ねることからフィクションが好まれるのではないでしょうか?

 

一方、ひと通りの経験を積んだ定年後になると、多かれ少なかれ現実との差異を感じてしまうフィクションよりも、どこまでも得体の知れない奥深い現実自体に魅入られてしまうのだと思います。

 

それでも、以前、映画「小さいおうち」の予告編をテレビで見た時、ミステリアスな感じに惹かれ、それが今回原作を読むに至ったわけでした。
物語を読み進めるにつれ、当初期待していたミステリアスな側面よりも最初は想定外だったものが、徐々に興味の対象として浮かび上がって来ました!

 

それは、「昭和十年代の東京山の手の中流家庭の生活」!
今まで抱いていた戦前の生活の暗く重苦しいイメージが、この本によって一掃されました!
戦前、一般市民は、案外それなりに日々の暮らしを楽しんでいたのでは?

 

もちろん、太平洋戦争が始まり、次第に戦況が悪化するにつれて、あらゆる面で生活が苦しくなっていったのは言うまでもありませんが、少なくとも戦争が始まる以前や戦争の初期の頃は、まだ一般市民の生活や意識はそう緊迫したものではなかったようです。

 

前々回のブログで取り上げた「失敗の本質」で描かれている悲惨な戦況の真実は、当時の一部の人たちと後世の人々だけが知り得たものでした。
一般の市民は、情報をブロックされ、その中で「小さいおうち」の住人のように慎ましい生活を送っていたのでした・・・

昭和初期のノスタルジーへいざなう「小さいおうち」!!