以前に読んだ「のぼうの城」の作者和田竜氏の長編「村上海賊の娘」を読みました。
これは、第11回本屋大賞と第35回吉川英治文学新人賞を受賞し、話題となった本です。
織田信長と石山本願寺の戦いが基調となっていて、織田方にくみする雑賀・泉州軍と本願寺方にくみする毛利・村上海賊軍が戦った木津川合戦(1576年)が描かれています。
そのなかで、両軍それぞれのヒーロー・ヒロインである泉州海賊の眞鍋七五三兵衛(まなべしめのひょうえ)と村上海賊の娘の景(きょう)が大きく取り上げられ、特に、物語の主人公である景(きょう)は、長編物語の全編を通じて暴れ回ります。
とにかく読んで面白く、戦闘シーンが長く、ドキドキハラハラの連続です。
ただ、ほかの歴史小説とは受ける印象がかなり違っています。
主人公の景(きょう)の言動がぶっ飛んでいるのです。
たとえて言えば、跳ねっ返りの「ヤンキーネーチャン」!
最初、このキャラに少なからず抵抗を感じ、読書を中断しそうになりましたが、読み進めていくうちに、こういうのも面白いと思うようになり、また、もう一人の面白いキャラの持ち主、海賊親分の七五三兵衛(しめのひょうえ)にも魅了されました。
七五三兵衛(しめのひょうえ)が登場すると、とたんに場がイキイキと活気づきます。
それは、なによりも、彼がしゃべるどぎつく面白い「泉州弁」のおかげです。
たとえば、
「おどれら、あいつら蹴散(いわ)しちゃれ!」
「目に物見せちゃらんかい!」
「なんやと思てけつかんねん!」
・・・・
泉州弁は、大阪府南部の泉州地域で話される方言ですが、わたしが育った、泉州と山脈を隔てた南側の和歌山市の和歌山弁とかなりよく似ています。
「泉州弁≒和歌山弁」の会話文を読むと、和歌山弁の中で育ったわたしには、単なる文字情報に終わらず、その場の雰囲気、話者の表情や身振り、内に秘められた感情、果ては話者の息の臭さまでもが臨場感を伴って迫ってきます!
「方言」とはやっぱりすごいものだ、とあらためて実感します!
作者は、数多くの資料を実に丹念に調べ、その資料名を小説中に律儀に挙げています。
しっかりした史実を土台とした展開があるからこそ、「ヤンキーネーチャン」も「海賊のオヤブン」も活躍の場を得て生きてくるのでしょう。
上下1000ページを超える長編ですが、アッという間に読み終えました!
和歌山へ連れもて行こら、Chromebook!!