数年前、図書館で「逆説の日本史」(井沢元彦)が本棚に何冊も並んでいるのを見て、第1巻から順に読みはじめ、日本史の面白さに開眼しました。
古代から幕末までの21冊はすでに読了し、連載開始から24年を経た今年、やっと明治時代に入った第22巻(西南戦争と大久保暗殺の謎)が発売されたのを読んだのでした。
幕末に、薩摩藩士の西郷隆盛と大久保利通は、新しい時代を切り開くため、共に戦った二人でしたが、明治維新の後、大久保は権力の中枢に入り、西郷は新政府の施策に反発し、野に下りました。
鹿児島に戻った西郷は、地元の不平士族たちに担がれ、不本意ながら反乱軍の大将になってしまいます。
ここに西南戦争が勃発し、熊本城や田原坂の攻防など半年余り激戦が続いた後、敗戦を覚悟した西郷は自ら命をたったのでした。
この本は、一般の歴史書と異なり、作者の意見や推論の記述が多く、かなりユニークな歴史書になっています。
その最たるものは、この本の最後の章となっている「補遺編」です。
「逆説の日本史」は起筆からすでに四半世紀を経過しているので、新たに発見された資料や遺物に対し加筆訂正が必要となり、「補遺編」が追加されています。
そして、ここで作者の真骨頂が発揮されます。
古代から現代に至るまで、一般に認識されていなくて、しかも日本の歴史を動かす源となっているもの、この作者独自の説がここで繰り返し繰り返し述べられています。
日本の歴史の裏に常に流れている、と作者が主張するものとは、
(1)ケガレ忌避
(2)言霊(ことだま)
(3)怨霊鎮魂(おんりょうちんごん)
上記3つについて、多くの事例をあげて説明されています。
たとえば、「言霊(ことだま)」については、古来より「言葉」とは「霊力を持つもの」であり、不吉なことを表す「言葉」を発するとその不吉が現実のものとなる、と信じられています。
昔はもちろんですが、現在でも、「忌み言葉」と言って結婚式のスピーチなどでは縁起の悪い言葉は忌避されます。
また、2000年、打ち上げに失敗した国産ロケットの打ち上げ費用の支払いをめぐり、運輸省・気象庁と宇宙開発事業団の間で裁判沙汰になりました。
この争いが起こった原因は、「失敗時の費用負担方法などが契約書に明記されていなかった」からなのだそうです!
「失敗時の費用負担方法」を「契約書に明記する」ことは、ビジネスも含めあらゆる契約についての常識なのですが、「縁起の悪いこと」は「書面に書くな」という漠然とした暗黙の了解が、不完全な契約書の作成に至ったのでした。
現代の最先端技術を代表するロケットの世界にも「言霊(ことだま)」は生きているのです!
「逆説の日本史」のように四半世紀存続するか、Chromebook!!