映画の本編が終わった後、出演者やスタッフの名前が記されたエンディングロールが延々と続きます。
今から20〜30年前、ほとんどのパソコンでシステムファイルとして使われていた「MS-DOS」 が起動する時の画面は、ちょうど映画のエンディングロールのようでした。
真っ黒い画面に、システムの内容を表す白い文字の集まりが、次々にロールアップしていきます。
PC-9801 が手元にない今となっては、起動時間がどれだけかかったか調べようもありませんが、とにかく黒い画面に映る自分の顔を見つめながら、ロールアップが止まりプロンプト( C:¥> のように入力待ち状態を表す記号)が点滅するのをひたすら待ったものでした。
Windows や Macのカラフルで洗練されたデザインの画面を見慣れた目には、黒い画面と白い文字だけの MS-DOS は異様な印象を与えると思います。
ちょうど、きれいなフォルムの車に乗っていて、ある時ボンネットを開けて、中の機械や部品が絡み合う油まみれのエンジンルームを覗いた時のようなものです。
スマートな外観と正反対の状況に違和感を覚えると同時に、車を動かす仕組みがここに詰まっているのだ、というワクワク感も覚えます。
MS-DOS は、見栄えの良い壁紙や天井板を引き剥がして中の骨組みが丸見え状態の建物のようなものでした。
プロンプトにコマンドを打ち込むと、ワープロや表計算などのアプリケーションソフトを起動させるのはもちろんですが、ファイルのコピー・移動ほか種々のファイル関連ツールを利用することができ、また、システムの奥の奥まで入ってなんでもできるという感じがしていました。
そういえば、車も昔はボンネットを開けて、いろいろいじくったものでした。
エンジンオイルやバッテリー液が減っていないか確認したり、点火ブラグを掃除したりなどしましたが、今ではほとんどする必要がなくなったりできなくなっています。
カメラも昔は、「距離」「絞り」「シャッター速度」を調整しないときれいに写らなかったのが、今ではなにもせずにシャッターを押すだけです。
いわゆる「バカチョンカメラ」です。
時代とともにすべてが「バカチョン化」しています。
車も運転するだけでよい「バカチョン車」(?)です。
パソコンも手作業中心の MS-DOS から Windows や Mac OSX へと「バカチョン化」してきています。
カメラや車やパソコンはますます操作が簡単になり、どんどん広く普及してきます。
今これを書いている Chromebook も、起動時間が10秒そこそこの短さ、メンテフリー、買ってすぐ使えるというように「バカチョン化」の最先端のものです。
Chromebook の快適さを感じつつ、MS-DOS の黒い画面を懐かしむ今日この頃!!