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定年後のゆる〜くたのしい日々

〜読書、語学、パソコン、音楽などをたのしむ日々のくらし〜

久木綾子「見残しの塔」

 

見残しの塔―周防国五重塔縁起

見残しの塔―周防国五重塔縁起

 

 

禊の塔―羽黒山五重塔仄聞

禊の塔―羽黒山五重塔仄聞

 

 今、「見残しの塔」を読んでいます。山口市にある瑠璃光寺(るりこうじ)の国宝、五重塔の建造にまつわる室町時代の物語です。

 

 実は、わたしは、現在、小説はまったく読んでいません。読みたいとは思わないのです。40数年前までの学生時代には小説ばかり読んでいたのですが、今は小説を読んでいると、頭のどこかで「これは結局、フィクション(作りごと)だ」という声が絶えず聞こえてきて面白さを感じなくなります。

 読む本は、「ノンフィクション」「評論」「歴史書」が中心。テレビで見る番組は、「ドキュメンタリー」「ニュース」「スポーツ」が中心。音楽を聴くのは、「ジャズ」が中心。酒のあては、「あたりめ」が中心。(意味不明?)

 

 そうした中で、あえてこの物語を読もうと思ったのは、「作者久木さん」と「物語ができるまでの過程」を知り衝撃を受けたからです。

 久木さんが70歳のときに旦那さんが亡くなり、翌年、旅行で東京から山口の瑠璃光寺を訪れ、五重塔をはじめて見ました。

 そのとき、五重塔に強烈な印象を受け、塔を建てた人たちの姿が浮かび、この物語を書こうと決意したそうです。

 それからは、五重塔を35回訪れ、多くの本や資料を読み、様々な専門家の先生を訪ね、建築を学ぶため大工の棟梁に1年間弟子入りし、高野山で1年修行し、物語に出る場所・街道はすべて自分の足で歩き、原稿を書くため80歳でパソコンを習い、執筆の準備に14年間(71歳から85歳まで!!)かけたそうです。

 その後、執筆に4年かけ、89歳ではじめて1冊目の本を出すことになります。

 2冊目の本「禊(みそぎ)の塔」をその後出し、現在、96歳で3冊目の本を執筆中だそうです!!

 相当の高齢であるのに、その気力、体力にまず圧倒されます。そして、歳をとってもやる気があれば、これだけのことが可能なのだ、という希望と勇気が与えられます。

 

 もう、物語が好きでないなどとは言っていられません。

 実際、14年もかけて時代考証を現地調査や資料で綿密に行っているのですから、うわっつらのフィクションであるはずがありません。

 久木さんの人生が投影された、ムダのない格調の高い文章をこれから味わっていこうと思います。